
墓石の香箱:種類と選び方
お墓を建てる際には、墓石の見た目も大切な要素です。故人の人となりや、遺族の想いを石に刻むため、様々な工夫が凝らされます。その一つに「香箱(こうばこ)」と呼ばれる加工があります。香箱とは、墓石の頂上部分に施される、小さな屋根のような装飾のことです。ちょうど、お香を入れておく箱を伏せたような形をしていることから、この名前が付けられました。
香箱の形状は、なだらかな曲線を描いた丸みを帯びた屋根が特徴です。この柔らかな曲線が、墓石全体に落ち着いた雰囲気と上品さを与えます。古くから、格式高い墓石に用いられてきたこともあり、荘厳な印象を与えます。また、香箱の屋根の四隅は、角が丸く削られています。これは、鋭利な角を避けることで、優しい印象を与えると共に、安全性を高める効果もあります。
香箱には、見た目だけでなく、機能的な利点も備わっています。屋根のように上部に出っ張っていることで、雨水が墓石の正面に溜まるのを防ぎます。雨水は香箱の傾斜に沿って左右に流れ落ちるため、墓石本体への水分の浸透や汚れの付着を軽減し、風化や劣化を遅らせる効果が期待できます。また、香箱があることで、墓石全体に立体感が生まれ、より存在感のある佇まいとなります。
このように、香箱は伝統的な美しさと実用性を兼ね備えた、優れた加工技術です。お墓を建てる際には、香箱の有無も検討材料に加えてみてはいかがでしょうか。