
守り刀:故人の安らかな眠りのために
守り刀とは、亡くなった方の枕元に置く小刀のことです。これは、あの世へと旅立つ故人を悪霊や魔物から守る魔除けとして、古くから用いられてきました。まるで故人に付き添う小さな護衛のように、死出の旅の安全を願う気持ちが込められています。
この風習は日本各地に古くから伝わるもので、地域によって呼び名が異なり、「守り刃物」と呼ばれることもあります。かつては、故人が愛用していた小刀や、新しく用意した小刀が使われていました。また、材質は鉄や鋼といった金属で、刃渡りは数センチから十数センチ程度と様々です。
守り刀を置く位置は、通常は故人の枕元ですが、地域によっては胸の上や布団の中に入れる場合もあるようです。そして、葬儀が済んだ後、守り刀は遺族が保管します。これは、故人の魂が刀に宿ると考えられていたため、大切に扱われてきたのです。
現代では、葬儀社の用意する白木の小刀や、刃物の形をした木片を用いる場合も増えています。それでも、故人の安らかな眠りと、あの世での安全を願う気持ちは、今も昔も変わりません。守り刀という風習は、故人の魂を守り、冥福を祈るという、日本人の死生観を反映した伝統的な儀式と言えるでしょう。時代とともにその形は変化しても、大切な人を想う気持ちは、この小さな刀に込められ、静かに受け継がれていくのです。