
危篤時遺言:最期の意思表示
人生の終わりは誰にでも訪れますが、その時期や状況は予測できません。だからこそ、元気なうちに将来のことを考えておくことは大切です。残された家族が困らないよう、自分の財産や想いをきちんと伝えておきたいと願うのは当然のことでしょう。しかし、病気や不慮の事故などで急に意識が薄れていくような時、どのように自分の意思を伝えれば良いのでしょうか。そのような差し迫った状況で有効な手段の一つが「危篤時遺言」です。これは、まさに死を目前にした人が、最後の力を振り絞って残すことができる特別な遺言の方法です。
危篤時遺言は、他の遺言方法とは異なり、非常に厳しい条件があります。例えば、証人が必要です。証人は、遺言を残す人の意思を確認できる人でなければならず、さらに、その遺言の内容を理解できる人でなければなりません。人数も最低でも3人以上必要です。これは、普通の遺言よりも多い人数です。なぜなら、危篤状態での遺言は、後から内容が争いになる可能性が高いため、より確実な証拠が必要となるからです。また、証人になれる人には、相続人やその配偶者、未成年者などは除かれます。これは、遺言の内容に影響を与えたり、不正を疑われたりするのを防ぐためです。
危篤時遺言は、口頭で行うことができます。文字を書くことが難しい状態でも、自分の意思を伝えることができるのは大きな利点です。しかし、証人が内容を正確に聞き取り、後日、速やかに家庭裁判所に申立てをする必要があります。この申立てが遅れると、遺言としての効力が認められない場合があるので注意が必要です。このように、危篤時遺言は手軽な反面、様々な条件や注意点があります。残された家族が混乱しないためにも、危篤時遺言について正しく理解しておくことが重要です。今回は、この危篤時遺言について、その要件や注意点、そして利用する際の手続きなどを詳しく説明していきます。