
帰依:信頼と安らぎの拠り所
身を寄せること、心を委ねること、それが帰依の心です。優れた人格者や高名な僧侶といった、人として目指すべき姿、道を照らしてくれる存在に、全身全霊で信じ頼る。自分の拠り所とする。それが帰依と呼ばれる行いです。この言葉は、サンスクリット語の「ナマス」という言葉がもとになっており、帰命や南無という言葉と同じ意味を持ちます。頭を下げて敬意を表すという行為だけでなく、心の中で教えに深く従うという意味も含まれています。額を地面につけるといった敬いの姿勢だけでなく、精神的な信頼と献身の心が何よりも大切なのです。
ただ崇めるだけではありません。そこには、深い信頼と、他に頼るものがないという切実な思いがあります。自分の力ではどうにもならない時、苦しみや困難に直面した時、心の支えとなる存在に全てを委ね、救いを求める。帰依には、そのような真剣な気持ちが込められています。人生は思い通りにならないことばかりです。苦しい時、人は誰かに助けを求め、何かにすがりたいと願うものです。それは、必ずしも宗教に限った話ではありません。家族や友人、自分が大切にしている信念や価値観といったものも、心の支えとなるでしょう。帰依という考え方は、そのような誰もが持つ心の動き、普遍的な人間の姿を捉えていると言えるのではないでしょうか。現代社会においても、この帰依の心は、私たちがより良く生きるための指針となるでしょう。