
死装束:故人の旅立ちを支える白装束
死装束とは、亡くなった方があの世へ旅立つ際に身につける衣服のことです。古くから、死は終わりではなく、新たな旅立ちと考えられてきました。あの世への道のりを無事に送り出すため、故人に死装束を着せて弔う風習は、長い歴史の中で受け継がれてきました。現代においても、葬儀の際に故人に死装束を着せる習慣は、多くの地域で見られます。これは、故人の安らかな成仏を願うとともに、残された家族の心を慰める大切な儀式といえるでしょう。
死装束には、白い着物や経帷子(きょうかたびら)などが用いられます。経帷子は、仏教の経文が書かれた白い着物で、故人が無事にあの世へ渡れるようにという願いが込められています。また、死装束には、足袋や草履、手甲など、旅に必要なものが一式揃えられていることもあります。これらの品々は、故人の霊魂を守り、あの世での生活を支えるものと考えられています。
死装束を着せることは、単に故人の旅立ちの準備を整えるという意味だけではありません。遺族にとっては、故人と最後の別れを告げ、新たな一歩を踏み出すための心の準備をするという意味も込められています。死装束を身につけた故人の姿を見ることで、遺族は故人の死を受け入れ、悲しみを乗り越えていく力を得ることができるのです。また、死装束を着せるという行為を通して、遺族は故人への感謝の気持ちを表し、冥福を祈るのです。
現代では、葬儀の簡素化が進み、死装束の代わりに普段着で送るケースも増えています。しかし、死装束には、古くから受け継がれてきた深い意味と、遺族の心を癒す力があることを忘れてはなりません。どのような形であれ、故人の冥福を祈り、最期の別れを惜しむ気持ちは、いつの時代も変わらない大切なものと言えるでしょう。