
彼岸と墓参り:ご先祖様との繋がりを考える
お彼岸とは、迷いや苦しみに満ちたこの世、すなわち「此岸(しがん)」に対して、悟りの世界である「彼岸(ひがん)」に到るための大切な仏教行事を指します。その語源はサンスクリット語の「波羅蜜多(はらみった)」に由来し、煩悩の海を渡り、悟りの境地へと至る道のりを示しています。
お彼岸の期間は、春分の日と秋分の日を中日として、前後三日ずつ、合計七日間です。春分と秋分は、太陽が真東から昇り真西に沈むことから、昼と夜の長さがほぼ等しくなります。この自然界の均衡がとれた時こそ、ご先祖様が住まうあの世と、私たちが暮らすこの世との距離が最も近くなると信じられてきました。そのため、お彼岸にはお墓に足を運び、ご先祖様を偲び、日頃の感謝の思いを伝えるという習慣が古くから根付いています。
お墓参りでは、墓石を丁寧に洗い清め、花や線香、お供え物を供え、手を合わせます。また、故人の好きだった食べ物や飲み物をお供えする地域もあります。お彼岸にお墓参りをすることは、ご先祖様への供養となるだけでなく、自身の命の繋がりを再確認し、感謝の気持ちを抱く大切な機会でもあります。
現代の慌ただしい暮らしの中では、家族や親族が集まる機会が少なくなっています。お彼岸は、お墓参りを通じて家族や親族が集い、共に過ごす貴重な時間ともなっています。故人の思い出を語り合い、家族の絆を深める機会として、お彼岸を大切にしたいものです。