
遺言で想いを伝える:指定分割のススメ
故人が生前に自らの意思で遺産の分け方を定めることを「指定分割」と言います。これは、民法で定められた法定相続分とは異なる形で、故人の望むとおりに遺産を分配する方法です。遺言書に記された具体的な指示に基づいて遺産分割を行うため、残された家族間での争いを未然に防ぎ、円満な相続を実現する有効な手段となります。
指定分割では、財産の種類や数量、それぞれの相続人への分配割合などを細かく指定できます。例えば、「自宅は妻に、預貯金は子供たちに均等に」といった具体的な指示が可能です。また、特定の相続人に特定の財産を相続させることもできます。例えば、「長男に会社を継がせるため、事務所と工場は長男に相続させる」といった具合です。このように、故人の具体的な希望に沿った遺産分割が可能となるため、相続トラブルの危険性を減らすことができます。
法定相続分とは異なり、故人の意思を尊重した分割方法であるため、相続人間で納得感が高まりやすいという利点があります。例えば、長年連れ添った配偶者に対して、法定相続分よりも多くの財産を相続させたいと考えた場合、指定分割によってその希望を実現できます。また、事業承継を円滑に進めるため、後継者に事業用の財産を確実に相続させることも可能です。
ただし、指定分割を行う際には、遺留分を侵害しないように注意する必要があります。遺留分とは、相続人に最低限保障されている相続分のことで、遺言によってこれを奪うことはできません。指定分割によって特定の相続人に多くの財産を相続させる場合、他の相続人の遺留分を侵害していないかを慎重に確認する必要があります。遺留分を侵害する遺言は、その部分が無効となる可能性があります。
指定分割は、故人の想いを確実に実現し、円満な相続を実現するための重要な手段です。専門家と相談しながら、適切な遺言書を作成することで、将来のトラブルを避けることができるでしょう。