延命治療

尊厳死とは、命の終わりが近いとき、延命のための医療行為を望まず、自然な流れに身を任せて亡くなることを言います。これは、自分自身の死と真摯に向き合い、どのような医療を望み、どのような医療を望まないかをはっきり示す行為です。尊厳死は、ただ亡くなる方法を選ぶだけではなく、人生の最後の時間をどのように過ごしたいかという、個人の意思を大切にする考え方に基づいています。人生の最期を安らかに、自然な形で迎えるために、尊厳死という選択肢について考えることは、人生の終わりに向けた準備の中で重要な意味を持ちます。 尊厳死は安楽死とは全く違います。安楽死は積極的に命を縮めることを目的としていますが、尊厳死はそうではありません。あくまで自然な死を迎えるための選択であり、苦痛を和らげるための医療行為は続けられます。たとえば、点滴によって栄養や水分を補給する行為や、痛みを和らげるための薬の投与などは、尊厳死を選択した場合でも継続されます。 延命のための医療を中止するのは、死を早めるためではなく、自然な死を迎える過程を尊重するためです。延命治療は、心臓や呼吸が止まった場合に人工呼吸器や心臓マッサージなどを行い、生命を人工的に維持する医療行為を指します。しかし、これらの医療行為は身体への負担が大きく、患者にとって苦痛を伴う場合もあります。尊厳死を選択する場合、これらの延命治療は行われず、苦痛を和らげる医療に重点が置かれます。 尊厳死を選択するには、家族や医師と十分に話し合い、自分の意思を明確に伝えることが大切です。そのためには、「終活ノート」などを活用し、自分の考えや希望を書き留めておくことが有効です。また、医療に関する代理人を指定しておくことも重要です。自分自身で意思表示ができなくなった場合に備え、信頼できる人に代理人になってもらい、自分の意思を医療現場に伝えてもらうようにしましょう。尊厳死は、人生の最終段階を自分らしく過ごすための大切な選択肢の一つです。