
錫杖と葬儀:その歴史と意味
錫杖とは、山伏が用いる杖のことです。山で修行する人にとって、険しい山道を歩く際に欠かせない道具であると同時に、信仰の象徴でもあります。杖の頭部は錫で出来ており、大きな鉄の輪に小さな輪がたくさん繋がっていて、歩くとジャラジャラと独特の音を立てます。この音には、深い意味が込められています。
一つは、煩悩を払う力です。私たちは日々、様々な雑念に囚われています。この音は、そうした煩悩を払い、心を静める効果があるとされています。山伏は、錫杖の音を聞きながら、自らの心を清め、修行に集中することができるのです。
もう一つは、魔除けの力です。昔の人は、山には魔物が棲んでいると信じていました。錫杖の音は、そうした魔を退散させる力を持つと信じられてきました。山伏は、錫杖を携えることで、魔から身を守り、安全に山を歩くことができると考えていたのです。
錫杖は、単なる杖ではなく、山伏の修行の象徴であり、信仰の拠り所でもあります。厳しい修行の道程を支える杖として、また、煩悩を打ち払う法具として、錫杖は山伏にとって欠かせない相棒なのです。錫杖を持つことで、山伏は自らの修行の決意を新たにし、心を静め、山岳信仰の道を歩み続けることができるのです。また、錫杖は山伏の位を表すものでもあり、輪の数が多ければ多いほど、高い位を示すとされています。錫杖は、山伏の魂を支える大切な道具なのです。