
送り火:故人の魂を見送る炎
お盆の最終日、夕暮れが街を包み込む頃、静かに炎が灯されます。これが送り火です。送り火は、盆の期間中に帰ってきていたご先祖様の霊を、再びあの世へと送り返すための大切な儀式です。あの世から私たちの元へ来てくださった霊は、再び長い旅に出なければなりません。そこで、迷うことなく無事に帰路につけるよう、道しるべとして焚かれるのが送り火なのです。
精霊棚に安置されていた位牌や故人の愛用品は、この炎によってあの世へと繋がると考えられています。夏の夜空を優しく照らすオレンジ色の炎は、故人への感謝の気持ち、そして再び会える日までしばしの別れを告げる気持ちを乗せて、ゆっくりと燃え上がります。パチパチと薪が爆ぜる音、ゆらゆらと揺れる炎を見つめていると、自然と故人の温かい笑顔や懐かしい思い出が胸に蘇ってくるようです。
送り火の炎は、この世とあの世を繋ぐ架け橋のような役割を果たします。それは、私たちに命のはかなさ、そして魂の永遠性について深く考えさせるきっかけを与えてくれます。送り火は、単なる儀式ではありません。故人と心を通わせる大切な時間であり、命の繋がりを再確認する機会でもあります。静かに燃え盛る炎を見つめながら、故人に感謝の気持ちを伝え、また会う日まで穏やかに過ごせるように祈りを捧げましょう。受け継がれてきたこの伝統は、これからも私たちと故人の繋がりを照らし続けてくれることでしょう。