
葬儀と樒:その歴史と毒性
樒(しきみ)は、神聖な場を彩る植物として、古くから私たちの暮らしと深く結びついてきました。マツブサ科シキミ属に分類され、一年を通して緑の葉を茂らせる常緑の低木、あるいは小高木です。春になると、葉の付け根に淡い黄色の小さな花を咲かせ、その姿は控えめながらも美しいものです。その後、実をつけますが、この実は中華料理などで香辛料として使われる八角(はっかく)に非常によく似ています。しかし、八角とは全く異なる植物であり、樒の実には強い毒が含まれているため、絶対に口にしてはいけません。
樒は、仏教において重要な意味を持つ植物であり、お寺や墓地などでよく見かけます。その香りには、邪気を払う力があると信じられており、お供え物として用いることで、故人の霊を慰め、安らかな眠りを祈ります。また、樒の葉は、仏壇やお墓に供える花材としても広く使われています。鮮やかな緑の葉は、故人を偲ぶ気持ちを表すとともに、神聖な空間を清浄に保つ役割も担っています。
樒は、花屋や仏花店などで手軽に入手できますが、その毒性の強さをしっかりと認識しておく必要があります。特に、小さなお子さんやペットがいる家庭では、誤って口にしたり、触ったりしないように、十分な注意が必要です。樒を扱う際には、ゴム手袋を着用するなど、直接触れないようにすることが大切です。また、樒を剪定した枝や葉、そして実などは、適切な方法で処分する必要があります。むやみに放置したり、一般ゴミと一緒に捨てたりすることは避け、各自治体の指示に従って処分するようにしましょう。樒の持つ神聖さと毒性を理解し、正しく扱うことで、私たちは故人を敬い、大切な命を守ることができるのです。