お供え花

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葬儀における菊の花:その歴史と意味

菊は現代の葬儀には欠かせない花となっています。白や黄色の菊が祭壇や棺の周りを飾り、故人を送る厳かな雰囲気を作り出します。なぜ菊が葬儀に用いられるようになったのか、その歴史を紐解いてみましょう。菊と葬儀の結びつきには、菊が持つ独特の性質と日本文化との深い関わりが関係しています。 古くから日本では、菊は高貴な花として大切にされてきました。平安時代の貴族に愛され、鎌倉時代には後鳥羽上皇が菊の紋を皇室の紋としたことからも、菊の特別な立ち位置がわかります。菊は生命力が強く、花持ちが良い花としても知られています。この特徴から、故人の魂が長く留まり、安らかに眠れるようにとの願いを込めて、菊が葬儀に用いられるようになったと考えられます。また、菊の香りが悪い気を払うとも信じられており、故人を守る意味もあったようです。 菊の花言葉も、葬儀に用いられる理由の一つです。白い菊は「誠実」「真実」といった花言葉を持ち、故人の清らかで誠実な人生を表すのにふさわしい花とされています。一方、黄色の菊は「高貴」「長寿」といった花言葉を持ち、故人の高貴な魂と永遠の命を象徴しています。これらの花言葉も相まって、菊は葬儀に欠かせない花として定着していきました。 現代では、菊以外にも様々な花が葬儀に用いられるようになってきました。しかし、それでも菊は葬儀の中心的な花としての地位を保っています。それは、菊が持つ独特の美しさと、日本文化と深く結びついた歴史、そして故人を偲び、送る人々の心に寄り添う力があるからでしょう。菊は、単なる飾りではなく、故人への弔意と敬意を表す大切な役割を担っているのです。
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葬儀と樒:その歴史と毒性

樒(しきみ)は、神聖な場を彩る植物として、古くから私たちの暮らしと深く結びついてきました。マツブサ科シキミ属に分類され、一年を通して緑の葉を茂らせる常緑の低木、あるいは小高木です。春になると、葉の付け根に淡い黄色の小さな花を咲かせ、その姿は控えめながらも美しいものです。その後、実をつけますが、この実は中華料理などで香辛料として使われる八角(はっかく)に非常によく似ています。しかし、八角とは全く異なる植物であり、樒の実には強い毒が含まれているため、絶対に口にしてはいけません。 樒は、仏教において重要な意味を持つ植物であり、お寺や墓地などでよく見かけます。その香りには、邪気を払う力があると信じられており、お供え物として用いることで、故人の霊を慰め、安らかな眠りを祈ります。また、樒の葉は、仏壇やお墓に供える花材としても広く使われています。鮮やかな緑の葉は、故人を偲ぶ気持ちを表すとともに、神聖な空間を清浄に保つ役割も担っています。 樒は、花屋や仏花店などで手軽に入手できますが、その毒性の強さをしっかりと認識しておく必要があります。特に、小さなお子さんやペットがいる家庭では、誤って口にしたり、触ったりしないように、十分な注意が必要です。樒を扱う際には、ゴム手袋を着用するなど、直接触れないようにすることが大切です。また、樒を剪定した枝や葉、そして実などは、適切な方法で処分する必要があります。むやみに放置したり、一般ゴミと一緒に捨てたりすることは避け、各自治体の指示に従って処分するようにしましょう。樒の持つ神聖さと毒性を理解し、正しく扱うことで、私たちは故人を敬い、大切な命を守ることができるのです。