後祓いの儀:清めの儀式
お葬式について質問
『後祓いの儀』って、何をするんですか?
お葬式の研究家
神道の葬儀で、出棺の後に行うお清めの儀式だよ。火葬に同行しなかった人が、祭壇を片付けて、手水や塩で身を清めるんだ。
お葬式について質問
火葬に行かなかった人だけ? なぜですか?
お葬式の研究家
神道では死を穢れとするから、火葬場に行った人も帰ってきてからお清めが必要なんだ。後祓いの儀は、火葬に同行しなかった人が、火葬から戻る人のために、お清めの準備をするという意味もあるんだよ。
後祓いの儀とは。
『後祓いの儀』とは、神道の葬式で行われるお清めの儀式のことです。神道では、死は『穢れ(けがれ)』とされ、これは『汚い』という意味ではなく、エネルギーが弱まることだと考えられています。エネルギーが弱まることを嫌う神道では、死による穢れをとても避けます。例えば、家族が亡くなると神棚を白い紙で覆って、この世との接触を断ちます。そして、五十日祭(仏教の四十九日にあたる)が終わるまで、神棚へのお供えやお祈りはしません。神様への礼儀よりも、穢れに触れることを避ける方が大切だと考えられているからです。このように、神道の葬式には穢れを祓う儀式が多くあります。葬式の流れはおおよそ、通夜祭、遷霊祭、神葬祭、出棺祭、後祓いの儀、火葬祭、帰家祭となります。後祓いの儀は、棺が火葬場へ運ばれた後に行われます。火葬場に行かなかった人たちが祭壇の後片付けをし、手水や塩で身を清めた後、神職にお祈りしてもらいお祓いを受けます。家の中と周りも掃除をして清めます。そして、火葬から戻ってくる人のために、入り口に手水と清めの塩を用意しておきます。
後祓いの儀とは
後祓いの儀とは、神道の葬儀において、火葬に付された故人の霊を送った後に行う、残された人々のための大切な儀式です。神道では、死は穢れ(けがれ)と考えられています。この穢れとは、私たちが普段「汚い」と感じるものとは少し違います。穢れとは、命の力が弱まること、すなわち、生命エネルギーの衰えを指します。人は亡くなると、その場に穢れが残ると考えられており、葬儀には、この穢れを祓い清めるための様々な儀式が組み込まれています。後祓いの儀もそうした儀式の一つで、故人の霊を火葬場へ見送った後、残された家族や親族、そして葬儀が行われた場所を清めるために行われます。
具体的には、神職が祝詞(のりと)を奏上し、大麻(おおぬさ)と呼ばれる神具で、参列者と場所を祓い清めます。大麻は、紙垂(しで)と呼ばれる紙片や麻を束ねたもので、神様の力を宿すとされています。神職が参列者一人ひとりの頭上で大麻を振り、穢れを祓い清めていきます。この後祓いの儀によって、参列者は故人の死によって弱まった生命エネルギーを取り戻し、清々しい気持ちで日常生活に戻ることができるとされています。また、葬儀場も清められることで、次の葬儀を滞りなく行うことができるようになります。後祓いの儀は、故人の霊を見送るだけでなく、残された人々の心身の健康と、場の清浄を保つための大切な儀式と言えるでしょう。古くから大切にされてきたこの儀式は、今もなお、神道の葬儀には欠かせないものとなっています。
儀式名 | 後祓いの儀 |
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意味 | 神道の葬儀において、火葬に付された故人の霊を送った後に行う、残された人々のための大切な儀式。故人の死によって弱まった生命エネルギーを取り戻し、清々しい気持ちで日常生活に戻ることができる。葬儀場も清められることで、次の葬儀を滞りなく行うことができる。 |
対象 | 残された家族や親族、そして葬儀が行われた場所 |
方法 | 神職が祝詞(のりと)を奏上し、大麻(おおぬさ)と呼ばれる神具で、参列者と場所を祓い清める。 |
効果 | 参列者は故人の死によって弱まった生命エネルギーを取り戻し、清々しい気持ちで日常生活に戻ることができる。また、葬儀場も清められることで、次の葬儀を滞りなく行うことができる。 |
神道における死の考え方
神道では、死は穢(けが)れと捉えられています。これは、肉体が朽ち果てていく様や、死によって失われる生命力が、衰退や腐敗といった負のイメージと結びついているためです。この穢れは、周囲の人々や場所にも影響を及ぼすと考えられており、さまざまな禁忌や儀式が存在します。
例えば、人が亡くなると、家の神棚は白い紙で覆われます。これは、神聖な場所である神棚を死の穢れから守るためです。この状態は五十日祭(仏教の四十九日に相当)が済むまで続き、その間は神棚へのお供え物やお祈りは禁じられます。神棚を閉じることで、神様と死を隔離し、神聖な空間を守ろうとするのです。
また、死は穢れであると同時に、故人の霊魂が不安定な状態であるとも考えられています。そのため、神道では、故人の霊魂を鎮め、無事にあの世へと送り出すための儀式が重要視されます。通夜祭、葬場祭、そして五十日祭といった儀式を通して、故人の霊魂を慰め、清め、神様のもとへと導いていくのです。
このように、神道における死生観は、穢れを祓い清めること、そして故人の霊魂を丁寧に弔うことに根ざしています。穢れを恐れる一方で、死を忌み嫌うというよりは、むしろ自然な出来事として受け止め、適切な儀式を行うことで、生者と死者の調和を図ろうとする考え方と言えるでしょう。そして、五十日祭を終えることで、故人の霊魂は祖霊となり、子孫を見守る存在になると信じられています。
概念 | 詳細 | 行動 |
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死の穢れ | 死は穢れであり、周囲に影響すると考えられている。 | 神棚を白い紙で覆い、神聖な場所を穢れから守る。五十日祭まで神棚へのお供えやお祈りはしない。 |
不安定な霊魂 | 死は故人の霊魂が不安定な状態。 | 通夜祭、葬場祭、五十日祭で故人の霊魂を鎮め、あの世へ送り出す。 |
死の捉え方 | 死は忌み嫌うものではなく、自然な出来事。 | 適切な儀式を行い、生者と死者の調和を図る。 |
祖霊 | 五十日祭後、故人の霊魂は祖霊となり子孫を見守る。 | – |
後祓いの儀の手順
後祓いの儀は、故人を見送った後の大切な儀式であり、火葬場へ同行しなかった遺族や親族によって執り行われます。出棺を見届けた後、静まり返った家の中で、まずは祭壇の片付けから始めます。生花や供物、故人の遺影などを丁寧に下げ、祭壇を元の状態に戻していきます。この片付けは、現世との別れを象徴する大切な行為です。
祭壇の片付けが終わると、参列者は手水を用いて身を清めます。柄杓で水を汲み、左手に注いで清め、次に右手に注いで清め、最後に左手に水をためて口をすすぎ、再び左手を清めます。そして残った水で柄杓の柄を洗い清めます。手水の作法は地域によって多少異なる場合もありますが、心を込めて行うことが大切です。手水に続いて、玄関先や家の周囲に塩をまきます。これは清めの塩と呼ばれ、葬儀で用いられた場所を清める意味があります。古くから塩には邪気を祓う力があると信じられており、この塩をまくことで、家と周囲を清浄な状態に戻します。
これらの準備が整うと、神職に祝詞の奏上と祓いをしてもらいます。神職は、故人の霊が安らかに成仏することを祈り、残された人々が平穏な日々を送れるよう、神に祈りを捧げます。そして、お祓いによって、葬儀によって家についた穢れを清めてもらいます。その後は、家の中や周囲の清掃を行います。特に、故人がよく過ごしていた部屋や、葬儀の際に使用した部屋は念入りに清掃し、清浄な状態にします。
火葬場へ同行した遺族や親族が戻ってくるまでには、玄関に手水鉢と清めの塩を用意しておきます。火葬という特別な場から戻ってきた人々は、すぐに身を清めることができます。火葬に同行した人も、同行しなかった人も、後祓いの儀を通して故人の冥福を祈り、新たな一歩を踏み出すのです。
儀式 | 説明 | 目的 |
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祭壇の片付け | 生花、供物、遺影などを丁寧に下げ、祭壇を元の状態に戻す。 | 現世との別れを象徴する。 |
手水 | 柄杓で水を汲み、左手、右手、口、左手、柄杓の柄の順に清める。 | 身を清める。 |
清めの塩 | 玄関先や家の周囲に塩をまく。 | 葬儀で用いられた場所を清め、邪気を祓う。 |
祝詞の奏上と祓い | 神職が故人の成仏と遺族の平穏を祈願し、家の穢れを清める。 | 故人の冥福を祈り、家の穢れを祓う。 |
清掃 | 家の中や周囲、特に故人がよく過ごしていた部屋や葬儀で使用した部屋を念入りに清掃する。 | 清浄な状態に戻す。 |
火葬場帰りのための手水鉢と清めの塩 | 火葬場から戻ってきた人がすぐに身を清められるように準備する。 | 火葬場から戻った人の身を清める。 |
後祓いの儀の意義
葬儀を終え、火葬も見届け、故人をあの世へと見送った後に行われるのが後祓いの儀です。この儀式は、故人の霊を弔った後に残された人々が、心身ともに清められ、気持ちを新たに日常生活へと戻っていくために行う大切な儀式です。古くから日本では、死は穢れ(けがれ)を伴うものと考えられてきました。葬儀に参列したり、故人に触れたりすることで、知らず知らずのうちに穢れを身に受けてしまうと信じられていたのです。後祓いの儀は、この葬儀によって身に付いた穢れを祓い清めるための儀式なのです。
具体的には、神社の神職や僧侶が、参列者に向けてお祓いを行います。お祓い棒や、塩、水などを用いて、目に見えない穢れを祓い清めてもらいます。これにより、心身ともに清々しい気持ちで、故人の冥福を祈ることができるようになります。また、後祓いの儀は、故人と残された人々との区切りをつけるという意味合いも持ちます。葬儀が終わっても、深い悲しみはすぐに消えるものではありません。しかし、後祓いの儀を行うことで、気持ちを切り替え、悲しみを乗り越えて未来へと進んでいくための一つの区切りとなるのです。後祓いの儀は、故人の霊を見送った後、残された人々が前向きな気持ちで日常生活に戻ることができるようにするための、そして、故人との別れをしっかりと受け止め、新たな一歩を踏み出すための、大切な儀式と言えるでしょう。
現代社会においては、簡略化されることも多い後祓いの儀ですが、その意義を理解し、改めて自分自身と向き合う時間として、大切にしたいものです。
儀式名 | 目的 | 具体的な内容 | 現代社会での位置づけ |
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後祓いの儀 |
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簡略化されることも多いが、意義を理解し、自身と向き合う時間として大切にしたい |
葬儀全体のながれ
人が亡くなり、あの世へ旅立つ際に行う儀式、すなわち葬儀は、いくつかの段階を経て執り行われます。神道の葬儀は、大きく分けて七つの段階があります。まず、通夜祭にて、故人の霊魂を慰め、夜通しお守りします。次に遷霊祭では、故人の霊魂を霊璽(れいじ)と呼ばれる依り代に移します。故人の魂がそこへ鎮まります。中心となる儀式である神葬祭では、故人に最後の別れを告げ、霊魂の安らかな旅立ちを祈ります。そして出棺祭で、霊柩車に故人をお乗せし、火葬場へと向かいます。火葬場では火葬祭を行い、故人の肉体と魂を分離します。その後、帰家祭で、故人の霊魂が鎮まる霊璽を自宅へ持ち帰り、安置します。これらの儀式全体を通して、故人の霊を敬い、見送ると同時に、残された人々が悲しみを乗り越え、清められるという意味があります。一つ一つの儀式には深い意味があり、故人の霊と生者の区切りをつける大切な役割を担っています。特に後祓いの儀は、葬儀の最後に行われる清めの儀式で、故人の霊が迷わずあの世へ旅立てるよう、そして残された家族が新たな生活へと踏み出せるよう、祈りを捧げます。故人の霊を見送り、残された人々が前を向いて生きていくための、大切な節目となる儀式と言えるでしょう。
儀式名 | 説明 |
---|---|
通夜祭 | 故人の霊魂を慰め、夜通しお守りする儀式 |
遷霊祭 | 故人の霊魂を霊璽(れいじ)と呼ばれる依り代に移す儀式 |
神葬祭 | 故人に最後の別れを告げ、霊魂の安らかな旅立ちを祈る中心となる儀式 |
出棺祭 | 霊柩車に故人をお乗せし、火葬場へと向かう儀式 |
火葬祭 | 故人の肉体と魂を分離する儀式 |
帰家祭 | 故人の霊魂が鎮まる霊璽を自宅へ持ち帰り、安置する儀式 |
後祓いの儀 | 葬儀の最後に行われる清めの儀式。故人の霊が迷わずあの世へ旅立てるよう、そして残された家族が新たな生活へと踏み出せるよう祈りを捧げる。 |
まとめ
後祓いの儀は、神道式の葬儀において欠かすことのできない大切な儀式です。この儀式は、人が亡くなったことでどうしてもこの世に残ってしまうけがれを清めるために行われます。大切な人が亡くなった悲しみの中にある遺族にとって、この儀式は大きな意味を持ちます。けがれを清めることで、心の中に生まれた不安や悲しみを少しでも和らげ、前を向いて新しい生活を始めるための一歩を踏み出す助けとなるのです。
後祓いの儀では、故人の霊が安らかに眠り、幸せな来世を送れるようにと祈りを捧げます。また、残された家族や親族が、故人の死を乗り越え、力強く生きていけるようにとの願いも込められています。神道の教えでは、死は終わりではなく、新たな旅の始まりと考えられています。ですから、後祓いの儀は、故人の旅の安全を祈るとともに、残された人々が故人の死を受け入れ、前向きに未来へと進んでいけるようにするための儀式でもあるのです。
神道では、死はけがれであると同時に、再生への大切な一歩とも考えられています。そのため、葬儀全体を通して、故人の霊を敬い、その安らかな旅立ちを祈るとともに、残された人々が新たな人生を歩んでいけるようにとの配慮がなされています。後祓いの儀は、その集大成とも言えるでしょう。この儀式を通して、故人の冥福を祈るだけでなく、参列者一人ひとりが、命の尊さや人生の意味について改めて考え、自分自身の生き方を見つめ直す機会にもなります。
人生の終わりを締めくくり、新たな始まりを祝福する儀式、それが後祓いの儀です。この儀式は、単に故人の死を悼むだけでなく、残された人々が未来へと希望を持って歩んでいけるようにするための、大切な意味を持つ儀式と言えるでしょう。神道の死生観や葬儀全体の流れを理解することで、後祓いの儀の意義をより深く理解し、その大切さを改めて認識することができるでしょう。
儀式名 | 目的 | 意味 |
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後祓いの儀 | 故人の死によって生じたけがれを清める |
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