密葬という葬儀のかたち

密葬という葬儀のかたち

密葬とは

密葬とは、家族やごく親しい人たちだけで行う葬儀のことです。一般的には、たくさんの人を招いて行う本葬の前に、火葬を済ませる目的で行われます。参列者は少なく、こぢんまりとした形になりますが、故人を偲び、最後の別れを告げる大切な儀式であることには変わりありません。

近年は、密葬だけで葬儀をすべて済ませる事例も増えてきました。このような変化の背景には、家族構成が小さくなっていることや高齢化が進んでいること、葬儀にかかる費用を抑えたいという思いなど、社会全体の変化が関係していると考えられます。また、故人の遺言や遺族の希望を尊重し、簡素な葬儀を望む人が増えていることも理由の一つでしょう。

密葬は、本葬に比べて参列者が少ないため、葬儀にかかる費用を抑えることができます。また、準備の手間も軽減でき、遺族の負担を軽くすることができます。特に、高齢の遺族や遠方に住む親族がいる場合、負担を少なくできることは大きなメリットです。

密葬には、故人との最後の時間を静かに過ごせるという利点もあります。近しい人たちだけでゆっくりと故人を偲び、心ゆくまで別れを告げることができます。

一方で、密葬には後から故人の死を知った人たちが葬儀に参列できないという問題点もあります。そのため、後日、改めてお別れ会や偲ぶ会などを開催するケースもあります。故人の交友関係などを考慮し、密葬と本葬、どちらの形が適切か、しっかりと検討することが大切です。

密葬を行う場合は、事前に親族や親しい友人などに連絡を取り、日程や場所などをきちんと伝えることが重要です。また、後日、改めてお知らせをする必要がある人たちのリストを作成しておくなど、事前の準備をしっかり行うことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

密葬のメリット

家族葬とも呼ばれる密葬には、いくつかの利点があります。まず、参列者が親族やごく親しい友人などに限られるため、葬儀全体の費用を抑えることができます。具体的には、広い式場を借りる必要がないため会場費用が抑えられ、参列者へのお食事や飲み物、持ち帰りいただく品などの費用も少なくて済みます。そのため、経済的な負担を軽減できるという大きな利点があります。

次に、葬儀の準備にかかる手間や労力を大幅に減らすことができます。一般的な葬儀では、多くの参列者への連絡や出欠の確認、席順の決定、供花の手配など、さまざまな準備が必要となります。しかし、密葬ではこれらの準備を簡略化できるため、残された家族の負担を大きく減らすことができます。特に、高齢の方や体調のすぐれない方がいる場合、負担が少ないことは大きなメリットと言えるでしょう。

また、故人との最後の時間をゆっくりと過ごすことができます。参列者が少ないため、慌ただしい雰囲気に流されることなく、落ち着いた環境で故人との別れを惜しむことができます。ゆっくりと時間をとって、故人との思い出を語り合ったり、感謝の気持ちを伝えたりすることで、心の整理をつける時間を持つことができます。

さらに、密葬を選んだ場合でも、後日改めてお別れの会や偲ぶ会などを開催することができます。密葬でゆっくりと家族だけでお別れをした後、改めて故人と関わりの深かった方々を招いて、故人の人となりや功績を振り返る場を設けることができます。このように、密葬はそれぞれの状況や希望に合わせて柔軟に対応できる葬儀の形と言えるでしょう。

密葬のデメリット

親しい人と最後のお別れをする大切な儀式である葬儀には、様々な形式があります。近年、家族葬に並んで選ばれることの多くなった密葬ですが、メリットがある一方で、いくつか注意しておきたい点、つまりデメリットも存在します。

まず、故人と親しい関係にあった方々が葬儀に参列できないという点が挙げられます。密葬は、ごく限られた人数で執り行うため、故人の友人や知人、職場の同僚など、広く周知することができません。そのため、葬儀に参列したくてもできなかった方々から、後日、問い合わせや心苦しい思いをされたというお声をいただく可能性も考えられます。特に、故人と深い繋がりがあった方にとっては、最後のお別れを告げる機会を失ってしまうことは、大きな悲しみとなるでしょう。

また、後日改めて本葬を行う場合、葬儀を二度行う手間が生じます。本葬を行うとなると、会場の手配や僧侶への依頼、参列者への連絡など、改めて準備が必要になります。それに伴い、当然ながら費用も再び発生します。香典をいただくことはできますが、それでも遺族の負担が増える可能性があることも考慮しなければなりません。

さらに、密葬という形式自体が、参列できなかった方々にとって故人との関係性を否定されたように感じてしまう可能性も懸念されます。特に、故人と親しかったにもかかわらず、密葬に呼ばれなかった方にとっては、寂しさや疎外感を感じ、故人との思い出に影を落としてしまうかもしれません。

そのため、密葬を行う際は、誰に連絡し、誰に連絡しないのかを慎重に判断する必要があります。事前に故人の交友関係をよく確認し、故人の人となりや関係性などを考慮しながら、参列者を絞り込むことが大切です。また、密葬後には、葬儀に参列できなかった方々へ、故人の死を丁寧に伝えるとともに、改めて弔いの意を表す機会を設けるなどの配慮も必要となるでしょう。

密葬と家族葬の違い

「密葬」と「家族葬」、どちらも近しい人だけで行う葬儀というイメージがあり、混同しやすい言葉です。実際には、この二つの言葉は全く異なる意味を持っています。その違いを正しく理解することで、故人や遺族にとってより良いお別れのかたちを選択できるはずです。

まず「密葬」とは、本葬儀を執り行う前に、ごく限られた人数で火葬のみを済ませる儀式のことを指します。一般的には、故人と特に近しい親族のみで執り行われ、後日改めて本葬儀を行います。密葬を行う理由としては、遠方に住む親族や関係者の都合がつかない場合や、感染症の流行などで多くの参列者を集めることが難しい場合などが挙げられます。また、近年では、葬儀の簡素化を望む人が増えていることもあり、密葬のみで済ませ、改めて本葬を行わないケースも増えています。

一方、「家族葬」とは、親族や親しかった友人など、限られた範囲の人だけで行う葬儀のことです。家族葬の場合は、火葬だけでなく通夜や告別式などの儀式も含めて行いますので、これ自体が葬儀の最終的な形となります。故人の生前の交友関係や遺族の意向などを考慮し、規模を縮小した形でお別れをしたいという場合に選ばれることが多いです。

つまり、密葬はあくまで火葬を先行して行うための儀式であり、後日改めて本葬を行うことが前提となります。一方、家族葬はそれ自体が葬儀の完成形であり、本葬に相当するものです。密葬後に改めて本葬を行う場合もあれば、密葬のみで済ませる場合、あるいは最初から家族葬を選択する場合など、様々なかたちがあります。それぞれの意味合いと違いを理解し、故人の遺志や遺族の状況に合わせたお別れの場を設けることが大切です。

密葬の後の対応

身内だけで葬儀を済ませる密葬は、近年増えてきています。葬儀を終えた後には、いくつかの大切な手続きやお知らせが必要となります。密葬の後、改めて多くの方々を招いて本葬を行う場合には、本葬の日時や場所を正確に伝えることが重要です。誰に伝えるべきかは、故人の生前の人間関係や遺族の意向を踏まえて慎重に決めましょう。案内状を送付する以外にも、電話や手紙で個別に連絡する方法もあります。

密葬のみで葬儀を全て終える場合も、故人が亡くなったという知らせは、関係者へきちんと伝えなければなりません。その際には、すでに葬儀は済ませたことを伝え、香典や弔電は辞退する旨を伝えるのが一般的です。近年は、インターネットや会員制交流サイトを使って訃報を伝えることも多いですが、故人の交友関係や遺族の気持ちなどをよく考えて、適切な方法を選びましょう。例えば、親しい友人には電話で直接伝える、仕事関係の方にはメールで伝えるなど、相手との関係性に応じて伝える手段を変えるのも一つの方法です。

香典返しについては、密葬のみで葬儀を終える場合、一般的には必要ありません。しかし、地域によっては異なる習慣がある場合もありますので、事前に地域のしきたりを確認しておくことが大切です。また、弔問を受けた場合など、状況によっては香典返しが必要となるケースもありますので、柔軟に対応しましょう。

故人の遺志や遺族の希望を尊重しながら、それぞれの状況に合った方法で、葬儀後の対応を進めていくことが大切です。

密葬の注意点

近親者だけで故人を見送る密葬は、近年増えてきています。しかし、密葬を執り行う際には、いくつか注意すべき点があります。まず、故人の交友関係を丁寧に確認し、密葬を行うことを伝えるべき人を慎重に見極める必要があります。親族や親しい友人以外にも、故人と深い関わりがあった人がいる場合、故人の遺志や家族の意向も踏まえ、連絡すべきかどうかを判断しなければなりません。誰に伝えるか、伝えないかによって、後々トラブルになる可能性もあるため、故人の関係性を整理した上で、慎重に検討することが大切です。

密葬の後、改めて広く弔問客を招いて本葬を行う予定がある場合は、密葬に参列する人たちに、本葬の日時や場所、またその際の服装や香典の有無などを明確に伝えておくことが重要です。密葬と本葬、それぞれの案内状を準備するなど、混乱を避けるための工夫も必要です。また、本葬の予定がない場合でも、その旨をきちんと伝えておきましょう。

香典や弔電については、密葬では受け取らない場合も多いですが、受け取るかどうかを事前に決めておくことが必要です。受け取る場合は、後で香典返しなどの対応が必要になるため、その準備も考えておかなければなりません。受け取らない場合は、その旨を丁寧に伝え、弔問客の気持ちを傷つけないように配慮する必要があります。

これらの注意点に気を配ることで、遺族は落ち着いた環境で故人を見送ることができ、弔問客も適切な対応をとることができるでしょう。故人を偲び、静かに最後の別れを告げる大切な儀式だからこそ、事前準備をしっかりと行い、円滑な密葬を執り行うことが重要です。